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日志


4月25日

CARASILの原因が解明され、NEJMに発表された!

CARASILの原因が解明され、NEJMに発表された!

 

先日、下記のメールが新潟大学の先生から届いた。CARASILは特殊な遺伝性の脳血管障害で、当院の患者がその病気であることを以前、当科に勤務していたI先生が神経内科という専門誌に発表していた。ぼくはそのあと、しばらくその患者を外来でフォローアップしていたが、途中で在宅療養が困難になったため施設に入院していた。6年前に新潟大学から依頼があり、患者、および親族の血液を提供してほしいとのことで、その施設に採血に伺った。

日本人5家系の検索で候補遺伝子の部位が特定され、遺伝子変異が同定された。新潟大学の先生たちは、その論文を臨床医学でもっとも権威があり、インパクトファクターが52という驚異的な引用率を持つ、New England Journal Medicineに投稿した。新しい実験を加え、何度も改訂を加えた結果、ようやく受理され、めでたく発表となった。遺伝子異常でだけでなく、そのことにより、TGF-βの機能抑制が低下することにより、その機能が亢進することが証明された。新潟大学の先生方のご苦労に称賛を送りたい。まだ、治療薬は開発されていないが、今後の進展を期待している。

共著者として、ぼくの名前と所属が記載されているが、下記の広報では、“--東京大学等との共同研究”の等のなかにはいる地方の病院に勤務している。

 

本件の取り扱いについては、下記の解禁時間以降でお願い申し上げます。

新聞                                                 :日本時間 423日 朝刊

テレビ・ラジオ・インターネット    :日本時間 423日 午前6

20094X

国立大学法人 新潟大学

 

脳血管障害のメカニズムの一端を解明

遺伝性脳血管障害の遺伝子を単離,

 

本研究成果のポイント

l  遺伝性脳血管障害の原因遺伝子を解明した

l  その遺伝子の異常によりおこるメカニズムを解明した

l  TGF-βシグナルの亢進が一部の脳血管障害の背景にある可能性を指摘した

国立大学法人新潟大学(下条文武学長)は、遺伝性脳血管障害の原因遺伝子と、そのメカニズムの一端を解明しました。脳研究所(高橋均所長)神経内科の小野寺理准教授と原賢寿医師,志賀篤大学院生らによる研究成果です.本研究成果は亀田第一総合病院,自治医科大学,国立精神・神経センター,日本医科大学,信州大学,東京大学等との共同研究です(配布資料参照)

脳の白質*1を中心とする血管障害は,より大きな脳梗塞や,脳血管性の認知症を引き起こすと考

えられています.MRIの普及で多くの患者さんが見つかっていますが,そのメカニズムはよくわかっていませんでした.脳の白質は,特別な仕組みを持った小さな血管で栄養が補給されています.今回,遺伝性に,この脳の小さな血管の障害を起こし,脳の白質の脳梗塞を起こす病気(CARASIL カラシル)の家系の解析から,その原因遺伝子を単離しました.単離した原因遺伝子はHTRA1(エイチティーエルワン)という遺伝子でした.この遺伝子は,TGF-β(ティージーエフベータ)シグナル*2を抑制する働きがあります.CARASILの患者さんでは,この遺伝子の働きが低下し,TGF-βシグナルが亢進していることがわかりました.

本研究の成果は,TGF-βシグナルの亢進が脳の小血管を中心とする脳血管障害を起こすことを示しました.特に,脳の小血管の血管障害のメカニズムの一端を示したことは,この病気だけではなく,他の非遺伝性の脳の小血管障害の治療,予防に役立つ薬の開発にも繋がることが期待されます.またCARASILはこれ以外にも,脱毛症,変形性脊椎症も伴うため,これらの病気の治療法の開発にも繋がることが期待されます.

本研究成果は,米国の医学雑誌『New England Journal of Medicine*3423日付け:日本時間423日)に掲載されます.

*1 白質

脳で神経細胞の細胞体は脳の表面に集まっていて,灰色に見えることから,灰白質(かいはくしつ)と呼ばれます。一方,内部の構造は,神経細胞の細胞体から伸びた神経線維が主体で,白っぽく見えることから白質(はくしつ)と呼びます.いわゆる脳梗塞は皮質に栄養を与えている大きな血管で起こるものもありますし,この灰白質に栄養を与えている小さな血管で起こることもあります.小さな血管の脳梗塞は一つ一つは症状を出さなくても,数が増えると問題を起こしてくると考えられています.

*2 TGF-βシグナル

TGF-βとは細胞から分泌されるタンパク質で,他の細胞に情報を伝えるものの一つです.TGF-βによって伝えられる情報をTGF-βシグナルといいます.このシグナルは細胞の増殖や,分化,死などを促します.特にがんや免疫との関連が注目を集めています.このタンパク質の仲間はたくさん知られていて,骨を作る蛋白や,髪の分化を促す作用をもつタンパク質も知られています.

*3 New England Journal of Medicine 

195年以上にわたる歴史を有し,世界でもっとも権威ある週刊総合医学雑誌の一つです.医学界のトップジャーナルとして,国内外の医師・研究者から高い評価を受けています.今日望みうる最高水準の科学研究が毎週発表される本誌は,ニュース番組や新聞紙上でいち早く本誌の記事が紹介されることも多く,掲載される医学研究論文は各種産業・株式市場といった多方面で強い影響を与え続けています.投稿原稿の年間総数は約3,600件にのぼり,そのうち掲載が認められるものは6%程度にすぎません.採用された論文はホットで信頼できる情報を提供しています.世界全体の総発行部数は,医学雑誌では最大の25万部以上です.医学専門誌および科学専門誌において,最も引用回数の多い雑誌とされています(インパクトファクター 52.6 2008)(南江堂HPより抜粋http://www.nankodo.co.jp/yosyo/user/html/

 

http://blog.with2.net/link.php/36571

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http://www.niigata-u.ac.jp/research/10_research_010/htra1.html

(新潟大学広報)

http://content.nejm.org/cgi/content/abstract/360/17/1729

NEJM抄録)

 

8月18日

卵巣奇形腫に合併した非ヘルペス性辺縁系脳炎

卵巣奇形腫に合併した非ヘルペス性辺縁系脳炎

 

若年女性に好発する非ヘルペス性辺縁系脳炎は神経内科領域で以前から注目されていたが、2007年にペンシルバニア大学のDalmau教授らにより、抗NMDA受容体抗体が病態に関与し、卵巣奇形腫を合併することが報告された。

 

http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?artid=1936221

(Ann Neurol 2007)

http://www.hosp.go.jp/~szec2/06/06-1-2-15.pdf

(急性辺縁系脳炎等の自己免疫介在性脳炎・脳症」 の診断スキーム)

辺縁系脳炎の臨床症状・所見:

1.    精神症状等(行動異常、思考滅裂、興奮状態、幻聴、精神運動興奮状態、

2.    統合失調様症状、記憶障害、せん妄、性欲亢進など)

けいれん発作、けいれん重積、口周囲異常運動

3.    自律神経症状(呼吸・循環動態不全、持続覚醒)

 

当院では、11年前と去年に同様症例を経験した。第13回日本神経感染症学会総会に演題を出したところ、ワークショップに採択された。他の4演題が大学からの報告であり、市中病院からの発表は当院からだけである。

 

なお、以前に大学勤務時代に、コクサッキーウイルスB4による脳炎の1例を臨床神経学に報告したことがあったが、もしかしたら、卵巣奇形腫を合併していたかもしれない。

臨床神経学は学会誌であり、PubMedに、Abstractが記載されている。

 

Rinsho Shinkeigaku. 1998 Jan; 38 (1):60-2.

[Coxsackie virus B4 encephalitis in a young female who developed mental symptoms, and consciousness disturbance, and completely recovered][Article in Japanese]

 

An 18-year-old female had common cold and insomnia in early March 1987. Later, abnormal speech and behavior, emotional incontinence, anorexia and consciousness disturbance appeared. On March 19, she was admitted to our hospital in semi-comatose state. Myoclonus-like movement on hands was observed, and epileptic attacks with tonic and clonic convulsions occasionally occurred. There were no neurological findings that suspected cerebral focal lesions. The respiration was assisted through tracheal intubation. Laboratory examinations showed inflammatory reactions (CRP+2, WBC 10,600) and transient high levels serum CK (6,215 IU). As she had bradycardia (30-40/min) with complete AV block on ECG, the pacemaker was implanted. The complication of myocarditis was suspected. EEG showed bilateral slow waves (3-6Hz), dominantly in frontal areas. Brain CT and CSF examinations were normal. After the combined administration of ara-A, dexamethasone and anti-convulsant, the consciousness level was recovered within a month. The serum antibody against coxsackie virus B4 alone was significantly increased. We concluded that coxsackie virus B4 caused acute encephalitis with mental symptoms and myocarditis with AV block. Recently, cytomegalovirus was reported to be the causative virus in a young female with non-HSV encephalitis who showed mental symptoms with good prognosis, but coxsackie virus B4 should also be considered as one of the causative viruses.

 

1011日(土) 15:001630

 司会: 鈴木 則宏(慶應義塾大学 神経内科)亀井 聡 (日本大学 神経内科)  

若年女性に好発する脳炎

演 題 名

W 若年女性に好発する急性非ヘルペス性脳炎(acute juvenile female non-herpetic

encephalitis:AJFNHE)-全国調査の報告-

日本大学(神経内科)亀井 聡

W 当科における抗NMDAレセプター抗体関連脳炎3症例の検討

自治医科大学(神経内科)島崎 晴雄

W 卵巣奇形腫に合併した非ヘルペス性辺縁系脳炎の2

    (私が発表する)

W 若年女性に好発する急性非ヘルペス性脳炎が疑われる1

川崎医科大学(神経内科)久徳 弓子

W NMDAR関連脳炎様精神症状、不随意運動を伴ったBickerstaff型脳幹脳炎の若年女

性の一例

順天堂大学(脳神経内科)河野 彩子

 

卵巣奇形腫に伴う脳炎症例は藤田保健衛生大学の野倉先生や山本先生により、世界で初めて、1997年に報告された。

Nokura K, Yamamoto H, Okawara Y, Koga H, Osawa H, Sakai K. Reversible limbic encephalitis caused by ovarian teratoma. Acta Neurol Scand 1997; 95:367–373.

 

A 19-year-old woman developed memory loss followed by psychosis, coma, convulsion, and central hypoventilation requiring mechanical ventilation. MRI of the brain showed minimal changes, and SPECT imaging revealed a small region of increased uptake in the cortex. Intravenous acyclovir and high-dose corticosteroids were administered without any effect. An extensive work-up revealed an elevated serum alpha-fetoprotein (AFP) concentration and the presence of an ovarian tumor. Following resection of the tumor, an immature teratoma by pathology, the patient had significant recovery of her cognitive function with some psychotic sequela. Serum anti-neuronal antibody (anti-Hu) was negative both by immunohistochemistry and by Western blot analysis. A rare combination of paraneoplastic limbic encephalitis and brainstem encephalitis was the suspected diagnosis. Because the tumor contained a neuronal component, we propose an immunologic cross-reaction as the pathomechanism, but the lack of a specific antibody may suggest cell-mediated rather than globulin-mediated immunity.

 

その患者のことを紹介した記事がある新聞に掲載されていたので、一部引用する。山本紘子教授は、「1リットルの涙」を書いた患者の主治医であった先生であり、日本神経学会の初めての女性理事である。

 

参考記事:(一部伏字にした)

卵巣奇形腫、辺縁系脳炎を克服、脳障害後遺症からあり得ないはずの復活(愛知県・--さん 女性31---) (2006/6/16)

◇卵巣奇形腫、辺縁系脳炎で死に直面

1994(平成6)12月、19歳の時、--さんは突然のめまいに襲われた。翌日から、高熱、頭痛、腹痛、おう吐に苦しんだ。突然、泣いたり笑ったりと、精神も不安定になった。そうした状態が1週間続いた。--さんは、そのころから約2年間、記憶がないと言う。

一番上の姉が、当時の状況を日記に綴っている。それによると、--さんは昏睡状態で藤田保健衛生大学病院に運ばれた。10日後に意識が回復した。超音波検査で、卵巣にこぶし大の腫瘍が発見された。病名は「卵巣奇形腫」。その腫瘍に対する抗体が脳にも働き、「辺縁系脳炎」を引き起こしていた。

すぐ手術をして腫瘍を取り除かないと、命の危険に及ぶ。--さんはこの時、自力での呼吸が困難になり、気管を切開して人工呼吸器を付けられていた。けいれんも頻繁に起きていた。手術に耐えられる体力があるかどうかわからない。

医師は、「手術をしなければ治りませんが、かなりの危険が伴います」と説明し、決断を家族にゆだねた。父は、2年前に胆管がんで亡くなっていた。気丈な母であったが、弱気になった。この子が死んだら私もいっしょに死ぬ……。

(中略)

高熱とけいれんが続く。医師は慎重に--さんの容体を見極め、手術に踏み切る。家族の強い祈りにも包まれ、右卵巣の摘出手術が成功した。

◇脳炎後遺症との闘いからあり得ないはずの復活へ

 

手術後、体は順調に回復した。しかし、声をかけても反応がない。言葉もなかなか出てこない。脳炎の後遺症だった。知的障害。

--さんは、精神病院に移り、入退院をくり返した。外出しても、いつ、てんかんを起こして倒れるかわからない。エスカレーターで発作を起こし、転がり落ちたこともあった。

1996(平成8)5月、脳炎発症から1年半後のこと、医師が母に告げた。「これ以上、入院を続けても、7歳児以上の脳には戻りません」。

しかし、母は動揺しなかった。決意は固い。必ず治してみせる! 母子二人三脚の真剣な闘いが始まった。

退院後、文字を読む練習を開始した。ふるえる右手を支えてもらい、字を書く訓練も積んだ。(中略)

1997(平成9)2月、--さんは近所の総菜店で働き始めた。だが、一つ教えられても、すぐに忘れてしまう。毎日同じことで厳しく注意された。涙があふれる。家に帰っては、やめたいと漏らした。

(中略)

--さんは努力に努力を重ねた。注意されたことをすべてノートに書きこみ、けなされようが、バカにされようが、前向きに仕事に挑戦していった。

(中略)

1999(平成11)、診察を終えた医師が、--さんに告げた。「何も問題ありあません。もう来なくても大丈夫です」 発症から4年あまり。治らないと言われていた脳が、劇的な回復を遂げたのだった。

(中略)

--さんの担当医の声

藤田保健衛生大学坂文種報徳會ばんぶんたねほうとくかい 病院

神経内科教授 山本病院長

--さんの病気は、傍腫瘍性症候群による「辺縁系脳炎」で、そのころ注目され始めた疾患でした。

当時勤務していた藤田保健衛生大学病院の神経内科で診察した時は、意識はもうろうとし、発語もほとんどなく、目もうつろな状態でした。初めは精神科で、うつ病や統合失調症として治療されていましたが、どこかに腫瘍があるのではないかとの疑いをもち、いろいろ検査した結果、卵巣に奇形腫が発見されました。

この間、昏睡で人工呼吸器が必要な状態が続いていましたが、産婦人科医を説得して卵巣摘出手術を断行しました。その結果、術後2日目に自発呼吸が見られ、5日目には開眼、11日目には話しかけにうなずき、笑うようになりました。

しばらくは、後遺症による筋力低下、感情障害、記憶障害も残りましたが、見事に回復され、結婚して元気なお子さんに恵まれた--さんの姿を、大変うれしく思います。私たち医療者も十分勉強させていただき、本当に良かったと実感しています。

 

PS:

今年の日本神経学会総会で、Dalmau教授の講演があったので、抗NMDA受容体脳炎について、彼の最新のデータを近日中に紹介する。

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8月9日

ラザロ徴候で抱きしめて

ラザロ徴候で抱きしめて

 

暑い夏が続いていて、夏休みをとりたいと思うこのごろである。

 

ところで、脳死患者に見られる脊髄反射であるラザロ徴候を題材にした、「ラザロ徴候で抱きしめて」という歌が、Youtubeに出品されていた。ぼくのブログのアクセス解析の部分からリンクを追って見つけた次第である。ラザロ徴候を示す脳死患者はまるで生きているような動きを見せるので、事前の知識がないと、患者の家族はこわがるかもしれない。担当医は脳死臓器移植の件を説明するときには、必ず説明するであろうが。患者家族はその場面を見ると、ショックを受けるかもしれないので、僕が担当医なら、家族には見せたくない。

 

ラザロ徴候(Lazarus sign

1984年に米国の脳神経学者AH・ロッパーによって5例が報告された。脳死患者が医師の目の前で、突如両手を持ち上げ、胸の前に合わせて祈るような動作をする。動作後は自分で手を元の位置に戻す。同様の現象はその後各国で多数確認され、日本でも医学誌に症例報告がある。動作のビデオも収録されている。ロッパーは「脊髄自動反射」と理解するが、疑問視する声もある。脳死患者を家族に見せないようにすべきとロッパーは書いている。(Wikipediaより引用)

 

www.youtube.com/watch?v=F61UOGA9OWU&feature=related

「ラザロ徴候で抱きしめて」

www.scienceagogo.com/news/20000011225628data_trunc_sys.shtml

Lazarus sign

www.lifestudies.org/jp/masui.htm

(森岡正博氏とのやりとり)

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PS;皆様はすでにご存じと思うが、小倉アナのかつらが外れてしまった動画を医局で皆が見ていて、大笑いしたことがあった。この動画を見た人の数の多いこと、現在834万回見られている。何度も見ている人も多いのではないかと思う。

 

http://jp.youtube.com/watch?v=GZPY8EpcDpo

 

 

7月15日

臨死体験ー終末医療における意義の検討ー

山村尚子:臨死体験-終末医療における意義の検討-

 

臨死体験に関する本格的な論文(対照群との検討を含む)が、1998年に日本で初めて報告されたが、ここに要約して紹介する。

 

日本老年医学会雑誌35:1031151998

山村尚子:臨死体験-終末医療における意義の検討-

(杏林大学医学部高齢医学)

 

要約:

 深昏睡に陥った連続38例につき、同一医師が同一プロトコールで臨死体験の有無を問診し、14例、37%に体験を認めた。体験ありの群と、体験なしの群で背景因子の差を検討した。体験場所としては病院が高率であった(あり6/14、なし1/24)。(但し、使用薬物による差異はなかった。)原因疾患では自殺企図者(4例)には1例も体験がなかった。

 体験の型として、超越型(transcendental)、自己観察型(out-body)、フラッシュバック型(flash-back)の3型を認めたが、欧米に多いトンネル体験の型は認めなかった。体験の構成要素として、暗闇の虚空と先方の薄明り、死者との遭遇、小川、川、溜池といった要素が認められた。

 臨死体験の影響として、死の恐怖が緩和したと述べたものがみられ、その後の生活態度が内省的になり、精神的影響をうけたとするものが、対照群に比べて有意に多かった。

 この研究結果から、高齢者の終末医療に益すると考えられた点は、1。死あるいは死に至る過程に関する体験的知識を収集することができた、2。体験者では死に対する不安、恐怖がないか、極めて少ないことが分かった、3。終末医療に従事するものが心すべきことが示唆された点であった。(以上は原文を少し簡略化した)

 

考察:

 臨死体験を医学の領域で扱うことに関する批判や反発などの問題点:

1)臨死体験は夢のようであり、とりとめのないものにかかわることはない、

2)夢でなければ、危篤状態での幻覚にすぎない、

3)たとえ、夢や幻覚でないとしても、本人が体験したと申したてたことを事実か否か、確認しようのないものを扱っても不毛である。

4)所詮オカルトの問題で、医学が関わるものではないといった指摘である。

(以下それぞれの項目について反論をくわえてあるので、有意義な点と思われることのみ、紹介する)

 

1)夢との異同

 夢と臨死体験を同一とするには無理な理由;

(i)夢は日常生活や活動などの近い過去の個人的記憶につながりを持つことが多いのに対して、臨死体験は非日常的な体験であり、死者との遭遇、フラッシュバックなど個人を越えた共通のタイプを持つ。

(ii)夢はさめた後、夢であったことを本人が自覚するが、体験者は実際の体験であったと強い確信をもっている。

(iii)夢はほとんど忘れてしまうが、臨死体験は絶対というほど忘れることがなく、ほとんど生涯にわたって記憶される。

(iv)体験の確信は、非常に強いにもかかわらず、誰に話しても本気にしてもらえず、体験者は内容をしゃべらなくなる傾向がある。夢の場合には、人に理解されたいという欲求や、それが満たされないことに対する孤独感、深刻な受けとめ方はない。

(v)夢には臨死体験のように体験後の人生に内省的影響を与えることはあまりない。

 

2)幻覚との異同(コメント:幻覚であるという考えを持つ研究者が大多数であるが、たとえば、日本では、養老氏、瀬名氏、澤口氏(後2者の論旨は「神にせまるサイエンス:Brain Valley研究序説」に書かれている。澤口氏は明快に、臨死体験は(p46−48)異常な脳活動の結果として説明可能であると結論している。”心臓停止などの状態では、脳は酸欠状態になり、ニューロンは異常な活動-バーストとよばれる異常発火-を示し、側頭葉でおこれば、側頭葉てんかんで体験されるものと同じような幻覚が出てくることになる。第一次視覚野などの低次な視覚野で異常発火が起きれば、まぶしい光を幻視することになるだろう。こうした体験を意識が回復した後に(記憶という脳活動に頼って)他人に伝えたり、自分で生理する時には言葉を使って再構成する。この際には育った文化の影響が当然ながら入り込む。幻覚自体もその人の生まれ育った環境の影響を受ける。キリストや神あるいは三途の川はそうやって再構成した幻覚といってよい。”(引用)彼はかなり楽観的に臨死体験の脳内機序について彼の仮説を述べているが、これは仮説であって証明されなければ、正しいとはいえない。実際の臨死の人を対象としたこういう研究は今まで日本ではなされていないと思うし、実際、倫理的制約があり難しいと思う。読んでいる人はあまりないと思うが、ベルナール・ヴェルベールの大著である「タナトノート-死後の世界への航行-」(NHK出版2600円、1996)という小説で、死刑囚を実験台に使い、薬物により臨死体験をさせ、死後の世界を実際に探求するという話である。僕の立場は、澤口氏が推定されているように、側頭葉の異常バーストが発現するまでは賛成であるが、その後、もう一人の自分(魂)が活性化され、脳から分離され(銀色のコードにつながっているらしいが)、自己や自分の周囲の人や景色を見たり、時には違う世界(死後の世界、過去、未来の世界)へ、移動するのではないかと想像している。)立花隆氏の「臨死体験」の結論についてのコメントを以前、このブログで書いたが、彼は臨死体験の脳内現象説が正しいのではないかと思っているが、現実体験説も完全には否定できないことも述べており、バランスのとれてコメントをされていた。)

 

 臨死体験は危篤状態の幻覚にすぎないという批判もある。幻覚とは、対象の実在しない知覚という意味である。臨死体験は、体験者と周囲のものが共通に認識しあえる客観的事象を共有しえない領域の情報であることから、幻覚に似た側面を持つ。

(i) 臨死体験者は体験の確信的自覚をもち、その体験が他者には理解されない状況にあることも充分認識しているのに対して、幻覚には病識や自覚がないのが普通である。

(ii)幻覚にはせん妄や興奮などの精神症状を伴う場合があるが、臨死体験にはそうした精神症状が伴わない。

(コメント:他にも理由をあげているが、幻覚は必ずしも、意識レベルの低下した状態でのみ見られるわけではない。パーキンソン病患者の幻覚は主として幻視であるが、l−ドーパという薬の副作用でみられることがあり、上記の(ii)の点から、臨死体験は幻覚ではないとはいいきれないと思う。)

 

3)確認しにくい訴えの扱い

臨死体験は本人の申し立てのみで、第3者が直接確認することのできない情報である。しかし、そうであるからといって、医学の対象にならないというのは当を得ない。

(i) 臨床医学は患者の訴えを素直に聞き、そのまま記載していくところから研究も診療も始まる。(コメント:正にその通りです。)

(ii)それを最初から熱にうなされた譫言にすぎないとしたんのでは、臨床的経験は得られず、学問の体系化もありえないであろう。 

 

4)オカルト的興味の問題

 臨死体験はたしかにオカルト的興味に堕す可能性がある。しかし臨死体験そのものはいわゆるオカルトではない。

(i)その情報をどう扱うかが科学の材料となるか、オカルト的興味に終わるかであって、臨死体験の記述に医学が関わること自体さしさわりはないと考える。

(ii)医学の側が客観的接近をおこなわなければ、この問題はいつまでも興味本位のテーマにとどまり、そこから積極的意義をもつ情報、教訓は得られない。

 

臨死体験の高齢者終末医療における意義

 臨死体験の実態はまだ不十分であり、その機序も諸説があり、定まっていない。我々は死および死後の不安、恐怖に対して、知識が皆無であるために、その内容が厳密な客観性を欠くとしても、臨死体験から伝えられる情報の意義は決して少なくないと考える。

 

1)死および死への過程についての一つの総合的情報あるいは解釈の可能性

2)終末疾患者への精神的援助、慰安

 臨死体験の内容や体験者の反応を提示して、死の恐怖やその過程での苦痛への恐れを持つ終末疾患者への精神的援助、慰安を与えることはできないであろうか。

3)高齢者の終末医療に携わるものへの教訓

 我々が受け持つ重症患者のなかに、精神的高みに達した個人のいる可能性のあることをわきまえて対応する必要がある。

 また。臨死体験の中には、抜けだし体験をして自己あるいは周囲を観察する要素が少なからずあった。このことは、昏睡状態にあって意識がないと思われる場合でも、患者にはなんらかの知覚亢進があって、医師や看護婦の挙動を観察している可能性があることを示唆している。(コメント;僕は昏睡状態でも、いつも患者が見ているという前提にたって、診療をしている)昏睡であるからと、気を許して、粗暴な扱いをしたり、不用意な言動は慎まなければならない。)

 (最後に、山村尚子先生は次のように結論している。)

 このように、臨死体験は、科学的態度をもって接近することにより、夢や幻覚、不毛の情報、オカルト趣味を脱して、現時点で最も死に近づいた直接的体験の情報を与えるといえる。この知識をもとにして、終末医療に対していくつかの貢献ができると考える。

 

コメント:山村尚子先生、日本の臨死体験の研究史に残る歴史的な発表をされ、感服いたしました。過去7年間にわたる研究に対して敬意を表します。日本ではこういう研究は大変で無理ではないかと思っていましたが、新しいご発表、大変ありがとうございました。今後のご活躍を期待しています。

 

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5月20日

神経内科を基本診療科からはずすな!!

基本診療科から、神経内科を除外することに強く反対する!!

 

48回日本神経学会総会が、三重大学医学部教授葛原茂樹会長の下、名古屋国際会議場で516日~18日まで開催された。515日に評議員会が開催され、そのときに、標榜科の話題がT先生から取り上げられた。神経科と神経内科がまぎらわしいのだが、ぼくとしては、神経内科に統一してほしいと思っていた。ところが、本日の讀賣新聞の朝刊を見ると、なんと神経内科が基本診療科からはずされているではないか!

 

 「厚生労働省は、患者が医療機関を受診する際、自分の症状にどの診療科が当てはまるのかが現状では分かりにくいとして、診療科の表記の仕方を抜本的に見直す方針を固めた。」(讀賣新聞から引用)

 

患者側が分かりにくいから、学会の意見を聞かずに、診療科の表記の仕方を改めるとは理解しがたい暴挙だ。しかも、脳血管障害、認知症、てんかんなどのcommon diseaseを扱う神経内科が基本診療科からはずれることは由々しい問題である。

 

 総合科などといういい加減な診療科を作るのには反対である。結局、専門医に患者を振り分けるだけの仕事であり、どの程度の有用性があるか、はっきりしない。

 

参考記事:引用

「診療科名38を26に、患者に分かりやすく…厚労省見直し

 厚生労働省は、患者が医療機関を受診する際、自分の症状にどの診療科が当てはまるのかが現状では分かりにくいとして、診療科の表記の仕方を抜本的に見直す方針を固めた。

 

 38ある診療科を26の基本診療科に整理する一方、医師が治療を得意とする専門分野や病名などを、いくつでも併記できるようにすることで、診療科の表記に関する規制を事実上、大幅緩和する。

 

 21日の医道審議会診療科名標榜部会に同省案として提案し、早ければ年内にもスタートさせたい考えだ。

 

 医療機関が看板で掲げることのできる診療科名は、医療法に基づき、医科で34、歯科で4と定められている。診療科名は、時代とともに細分化されてきたが、基本的な診療科と専門性の高い診療科が混在し、「『内科』と『胃腸科』のどちらにかかればいいのかわからない」などの声が患者から出ていた。

 

 同省案では、「アレルギー科」「心療内科」など、すでにある専門的な16の診療科を、新たに位置づける基本診療科からはずす。一方で、初期診療を担当し、必要に応じて患者を専門医に振り分ける「総合科」や、「病理診断科(または臨床検査科と言い換え)」「救急科」の四つ(言い換え分を含む)を基本診療科として新設する。

 

 現在は、診療科をいくつ掲げても構わないが、改正後は医師1人につき二つまでしか掲げられなくなる。その一方で、治療が得意な「人工透析」「ペインクリニック(痛み緩和)」などの専門分野や、「糖尿病」「花粉症」などの病名を、小さな字か、かっこ内に書くなど、基本診療科名と区別する形でいくつでも表記できるようにする。

 

 例えば、花粉症の患者の場合、「アレルギー科」「耳鼻いんこう科」などのどれを選べばいいか現在は判断しにくい。また、「アレルギー科」を掲げていても、得意分野が、花粉症なのか、食品アレルギーなのか、皮膚症状なのか、看板だけでは判別できない。改正後は、基本診療科として残る「耳鼻いんこう科」などのうち、得意分野で花粉症を掲げる医療機関を選ぶことができるようになる。同省では、6月中にも標榜部会での審議を終え、医療法施行令などを改正する方針。

 

200752030  読売新聞)」

10月8日

ライム病の末梢神経障害

 

        ライム病の末梢神経障害 

 

以前、ライム病について、日本神経感染症学会で発表したことがあった。その症例を経験する数年前に、ライム病における末梢神経障害という総説を依頼されたことがあった。まったく経験していないのに、総説を依頼されるたことは不可思議なことである。

 同じようなことが、それ以前にもあった。帯状疱疹に関する神経障害の総説の依頼も何故かぼくに回ってきたかは、不明である。

 下記の症例を学会の抄録を一部改変して紹介する。この症例については、英文で投稿しないといけないのだが、筆無精のため、論文が未完成になっている。

 

 福島県山系で感染し,有痛性radiculoneuritisを呈したライム病の1例

【目的】両下肢のしびれ,痛みを呈したライム病について,感染地域,臨床症状,抗体検査,末梢神経生検について検討した.

【症例】XX歳,男性,主訴:両下肢のしびれ,痛み,歩行障害,既往歴:MDMA使用歴あり,飲酒,焼酎250ml/日,現病歴:XXX年8月頃福島県湖南町近くの山を数時間散策した.その後,時期不明だが,下肢に発疹が出現した.翌年5月末両下肢のしびれ,痛みが出現した.下肢の背側から遠位部にかけて痛みが走る時もあり,歩行障害が悪化したため,6月30日に入院となった。

【結果】神経学的所見:脳神経は正常、運動系では下肢の近位部が軽度,遠位部が高度の脱力, 感覚系では振動覚が足指で高度低下,足関節は軽度低下,両足の異常感覚は高度.PTRATR消失, 病的反射はなし.検査: ANA x40, P-ANCA(-), C-ANCA(-), ビタミン B1正常, FBS123mg/dl, HbA1C 5.9, cryoglobulin(-), HIV-1(-), HTLV-1(-), anti-SSA(-), anti-SSB(-), 末梢血リンパ球分画;CD4 59.9%,  CD8 17.7%, CD4/CD8 3.4, HLA-DR+CD8+ 1.2% (2.9-24.5), HLA-DR+CD4+ 3.1%(1.9-8.2),  NK 2.0%(8.9-29.5), 血清B. garinii IgG x64011月:x160),髄液:蛋白 76mg/dl, 細胞81/3 (99% 単核球),糖77mg/dlPCR-B. garinii (-),筋電図:下肢ではMCV, SCV, F波誘発不能,腓腹神経生検:有髄線維密度は軽度低下,軸索変性が主(E: 22.5%) endoneuriumの浮腫が中等度,perineuriumに著明なリンパ球浸潤あり,酵素抗体法によるB. garinii.は検出されず .また,壊死性血管炎や異常な沈着物質はなし.治療:CTRX2g/x14日の投与により,髄液所見の改善と神経症状の中等度の改善が見られた.

【考察】日本でのライム病の病原体Borrelia gariniiの有力媒介マダニは、本州では地方により数100m〜1,000m以上の山間に生息するシュルツェマダニであり、菌の保有動物は本種マダニが寄生する野鼠が主である。東北南部に位置する福島県では、吾妻山系の本種マダニや野鼠類がボレリア陽性という報告があるほか,低山帯でも本種マダニは広く見られる.ライム病の末梢神経生検の報告は日本ではないが,外国で報告されているように,軸索変性と神経周囲組織の炎症所見は見られたが,有髄線維の減少は軽度であった.また,本例では,活性化CD8細胞とNK細胞の低下があり,病態との関連性が推定された.

 

http://hranmu.spaces.live.com/blog/cns!F6D2A9D447E0DCE9!229.entry (ライム病で見られる末梢神経障害)

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6月27日

患者が幽霊を幻視

僕が福井医科大学にいたころのかなり昔の話である。

 

患者が幽霊を幻視し、話をする事件

 

 僕が臨死体験の現象に興味を持ったのは、次のような出来事があったからだ。10数年前、外来での診療を終え病棟に戻ると、受け持ち患者が不穏状態なり、すぐに退院したいとのことで、僕はすぐに病室に走った。彼女は70歳台の女性で、パーキンソン病(PD)の治療のために入院していた。

 

 そのおばあさんが興奮して話をしました。

 

”こわいんで、すぐに退院させてほしい”

”どうしたんですか?”

 

”先ほど死んだ人が、窓の外からこちらを見て、今死んだので、ひとりで行くのはいやだから、いっしょに行ってくれないか?”

”本当、そんなこと信じられないけど”

 

 あまりにも執拗に懇願するので、

”男の人か、女の人か、いくつぐらいの人か”とたずねた。

”男で40歳台ぐらいかな”

 

 それで、すぐにナース・ステーションに戻り、だれか死んだ患者がいないかと看護婦に聞いたら、1時間前に肝臓癌で亡くなった患者がいるとのことで、おばあさんが言っていたような年齢で男の患者でした。昼間でしたが、鳥肌がたち、ぞくぞくしました。もう一度おばあさんのところに戻り、

 

”先ほどその人が窓の外に来たようだけど、一度だけ来ただけか?”

 

と聞いたら、昨晩も来て誘われたと答えました。PDの治療として、l-ドーパを使っていたので、その副作用かなと最初思いましたが、患者は歩行できない状態で患者の病室と亡くなった患者の病室とは30m以上離れているので、瀕死の患者のことなど知りようがないと考え、患者の言い分を認め、すぐに退院してもらいました。その後、その患者からの連絡がなく、どうなったかは定かではありません。

 

 この時、私が推定した仮説は、l-ドーパの薬の副作用により患者の認識能力が増強し、一般健常人では認識できない姿(体外離脱した霊体)を観察したのではないかというものでした。それ以後、その方面の書物をいろいろ読んでみました。この話は地元のテレビ番組(いやはやなんとも金曜日(福井))、なんと出演料はわずか5000円)で初夏、こわい話としてしゃべったことがあり、また金縛りについての解説もしました。

 

 この出来事は臨死体験というより、実際に亡くなっていった方の姿を薬の副作用によりPD患者が目撃し、しかも話もしたという特異例です。私の経験では統計をとっているわけではありませんが、重症者がなくなると、数日以内に同じ病棟の他の重症者が亡くなる場合が多いような印象を持っています。

 

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(カール・ベッカー:死の体験)

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6月7日

養老孟司先生の「脳と時間」

            養老孟司先生の特別講演

 

 第47回日本神経学会総会が、京王プラザホテルで開かれた。会長は東京女子医大の岩田誠教授であった。養老孟司先生が、「脳と時間」について講演した。

 

 最初に、Zenonの逆理が紹介された。アキレスと亀の競争の話であった。時間を考慮しないと、アキレスは永久に亀を追いこすことができない。これは目による視覚のみで判断すると、そのようになる。

 

耳は音声であるが、両者(目による視覚)が相まって、言葉が生まれる。目は絵画であり、時間を内在しない。一方、耳は音楽であり、時間を内在し、運動系とつながっている。目で認識するものは空間であり、デカルト座標である。言葉には、時空の概念がアプリオリにある(カント)。絵画と言葉の境にあるのは、アイコン(元の性質を持っている)であり、漫画であり、漢字である。音楽と言葉の境にあるものは、詩歌であり、作者が詩歌を朗読すると、音楽性を持つ。音楽は右脳にあり、言語は左脳にある。

 

 客観性について、ニュートンの絶対空間、アインシュタインの相対空間、ハイゼルベルグの不確定性原理について述べた。素粒子の位置を決定することはきない。

 

 感覚器からの信号を大脳連合野で違いを検出しているが、現代人は同じものと認識している。虫は虫、雑草は雑草とひとまとめにしてしまっている。孔子の書いた詩を読むと、草がわかる。感性をみがきなさい。動物や赤ちゃんは絶対音感を持っている。

 

 TBSで、1ヶ月の赤ちゃんに母乳をガーゼに浸しておいて、寝かせておくと、

本当の母親のほうを向く。父親もやったが、間違っていた。

 

 脳を道具として、使っているが、その限界を知らなければならない。なお、東大退官直前の給料は40万円だったそうだ。パソコンが当時同じ値段だったので、結局購入しなかったとのこと。また、客観性は存在しないと思っているので、レフリー付きの論文は、金もかかるので、投稿しないことにした。

逆に文章を書くと、儲かるのでもっぱら本を書くことにした。

 

 養老先生は黒板に簡単な絵を書いて説明していたが、テレビで見るのとまったく変わっていなかった。

 

ゼノンの逆理についての考察は下記にあります。

 

http://www6.plala.or.jp/swansong/007400taikakusen.html

http://www5f.biglobe.ne.jp/~kinosita/td.htm

http://www.infonia.ne.jp/~l-cosmos/relativity/zeno/ZenoParadox.html

 

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5月3日

池谷裕二先生、「進化しすぎた脳」、ウェルニッケ失語、論争

池谷裕二先生、「進化しすぎた脳」、ウェルニッケ失語、論争

 

 池谷裕二先生のHPの掲示板に、批判のコメントを書いてしまったが、その経過を書いておくことにした。

 

失語症についての簡単な説明:下記のブログから引用

http://www.doblog.com/weblog/myblog/40454/

 

http://www.doblog.com/weblog/myblog/40454/1012555

 

[運動性言語野:ブローカ野]

フランスの医師ブローカが1861年に扱った症例(Tanの症例)により発見された言語野。みんなから「Tan」と呼ばれていた男性患者は、『相手の話している内容を理解できるが、話すことができない』状態でした。その患者の死後、ブローカが左図の青い部分に脳梗塞をみつけ、この部位の機能が「ことばを話す能力」であると発表しました。

 

[感覚性言語野:ウェルニッケ野]

ポーランド生まれのドイツの医師ウェルニッケが1874年に扱った症例により発見された言語野。『相手の話している内容を理解できないが、話すことはできる』状態である患者の脳を解剖し、上図の赤い部位が「ことばを理解する能力」と関係があると発表しました。

 

ブローカ野に病巣や障害があると、「運動性失語症(ブローカ失語)」と言い、次のような症状を示します。

 

* ことばの理解はおおむねよいものの、実際に話すことは少なくなる

* 話された内容はぎこちないものである

* 書字障害の程度はさまざまであるが、漢字より仮名の書字障害が顕著である

 

 

一方、「感覚性失語症(ウェルニッケ失語)」は次のような症状を示します。

 

* ことばの理解はあまりよくないものの、実際に話す量は多い

* 話された内容はとても流ちょうである

* 書字障害は顕著である」(引用終了)

 

「進化しすぎた脳」池谷裕二(朝日出版社)

 

 かなり以前に買った本であるが、つんどく状態だった。神経内科医にとって、簡単なところから読み始めた。そうしたら、とんでもない間違った記述がされていることを発見した。下記の項目であるが、きちんとした勉強をしてこなかったのではないだろうか?彼のHPの掲示板に、その旨を書いておくことにした。

 

池谷裕二様:

神経内科の専門医です。「進化しすぎた脳」の本の中で、初歩的な間違いを発見してしまいました。あなたの知的バッグランドがこの程度のものなのかと、愕然としました。このオープンな掲示板に注意を喚起します。

 

2-10 「ウェルニッケ失語症」

 

「この患者は本当に気の毒で、「何を飲みたい?」と訊いても答えられないんだ。「何を飲む」という問いに答えるためには抽象的なことを考えなくてはいけない。でも、そのかわり、「水を飲みたいですか」とか「ジュース飲みたいですか」というふうに具体的に訊けばきちんと答えられる。もしくは、患者を冷蔵庫につれていって、扉を開けて「どれを飲みたいかを選んでください」というとやはり選べる。これも具体的な質問だよね。見えるものから選ぶわけだから。」(引用終了)

 

 ウェルニッケ失語は、感覚性失語とも言い、言葉の意味がわからないための失語です。

 

“「水を飲みたいですか」とか「ジュース飲みたいですか」というふうに具体的に訊けばきちんと答えられる。”ということは、ありえません。神経内科の教科書を読んでください。

 

以下は、池谷裕二先生のHPの掲示板より引用しました。

Re:[97] ウェルニッケ失語症の解釈の間違い 投稿者:はし 投稿日:2006/04/30(Sun) 23:14  

初めまして。京都で神経内科医をしています。以前からご著書を楽しく拝読させていただいております。
前の方の書き込みを見て書き込んでおります。たしかにウェルニッケ失語症は感覚失語が主症状で、話された言葉や書かれた言葉が理解しにくくなります。しかし、よほどひどくなければ、まったく理解できないわけではありません。ご著書でとりあげられた症例は十分にありえる話です。臨床では教科書通りの患者に出会うことはほとんどありません。この方はまだ臨床経験の浅い方ではないでしょうか。最近は紋切りガリ勉型の若医者が増えてきていまして、未来の医療を憂れえております。この書き込みは単に自己宣伝のためではないでしょうか。

 

Re:[98] [97] ウェルニッケ失語症の解釈の間違い投稿者:がや 投稿日:2006/05/01(Mon) 09:37    

ご専門の方々の書き込みありがとうございます。

 

少々困惑しておりますが、拙著で取り上げましたものは“実例”であります(おそらく読者の皆さんはそれが誰なのか人物も特定できるかと存じます)。つまり問題は「ウェルニッケ失語症」の定義の“範囲”にあるように感じました。

 

私は失語症の専門ではありませんので、どちらのご意見が正しいのかまったく判断はできませんが、このように皆様にご迷惑おかけるすような不用意な発言が拙著に含まれていましたことを深くお詫びしたいと思います。(引用終了)

 

53

 

池谷裕二様、およびはし様:

 

 ご返事ありがとうございました。ぼくの書き込みが消去されてしまうのではないかと思っていましたが、さすが、一流の研究者だと感心しました。ぼくも、アメリカ(University of Pennsylvania(1980-1983oligodendrogliaの培養をもっぱらやっていました)に留学した経験があります。海外の学会発表でのすさまじい質問攻めには当初はカルチャーショックを受けました。アメリカから帰国後は、自分自身が質問魔になっていまい、その点では悪評を買っているかもしれません。

 

 著書で紹介された内容が実例であったとのことでした(読解力不足でした)ので、再度コメントをさせていただきます。

 

物理学者の示す症状(言葉が理解できる)は、私にとっては、驚きでした。

このような患者を経験したことがありませんので、最初の無礼なコメントになってしまったことをお詫び申し上げます。

ウェルニッケ失語を呈する場合、ほとんどが脳梗塞の場合が多いと思います。

急性期には、まったく言葉による言語理解ができなかったのではないでしょうか。リハビリを行うなどことによる脳の代償機能の賦活化など、また未知の再生メカニズムにより、少し症状の改善が見られたのでしょう。

 

「聴理解の障害

どんなに重篤な聴理解が障害されていても、言語的および情動的イントネーションや相手の表情、その場の状況などを読み取る能力は保たれており、複雑な内容も意外と理解してしまうこともある」(「脳卒中と神経心理学」(平山惠三、田川皓一編、医学書院より引用))

 

なお、私は若者ではありません。池谷先生より20歳年上です。大学での研究生活が長かったため、臨床経験は不十分だと思っています。現在の病院に赴任してから、5年間が経過しました。脳梗塞患者の入院は年間250人程度であり、失語症を呈する患者は入院1-2ヶ月以内に、リハビリ専門病院に転院になります。したがって、回復期の患者がどのような言語機能を示すか、具体的の経験したことがほとんどないのが現状です。

 

臨床のモットーは、「患者から学ぶ」です。診断に苦慮する患者を経験することがあります。そのようなときには、PubMedが頼りです。現在、神経内科部長という立場ですが、先月は私の受け持ち患者数が最高18人もいました。文献を読む余裕がありません。学会、研究会で新しい情報を仕入れて、脳をアップデート化しています。来週は、日本神経学会が東京であります。会長の東京女子医大の岩田誠教授に今回のことを伺ってみようと思います。

 

PS:近日中に、私が医学監修をした、「脳にマラカスの雨が降る」(栗本慎一郎著)を謹呈させていただきます。専門的なところで間違いがいくつもあり、恥ずかしいのですが。下記のHPに、そのことが書かれています。

 

http://www.geocities.co.jp/Technopolis-Mars/3218/

 

http://gaya.jp/ikegaya.htm (池谷裕二のホームページ)

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12月15日

ひょうい現象のメカニズム,火事馬の馬鹿力

リサーチ200Xひょうい現象のメカニズム

 リサーチ200Xでひょうい現象のメカニズムについての番組があった。途中から見たので内容は少し不正確かもしれないが、下記のようなストーリーだった。

 ある若い女性がこっくりさんゲームをやっていたら、いわゆる狐つきの状態となった。専門医による精密検査により下記の疾患は除外された。

 

脳外傷などの脳損傷、薬剤性または有害性のある毒物、精神分裂病、解離性同一性障害

 

澤口俊之氏がひょうい現象の脳内メカニズムについて解説していた。

暗示を与えていないのに狐の霊や女性の霊がとりついたりするのはなぜだろうか?46野(前頭前野)の機能低下がおこるために自己の人格と関連している前頭葉の10野、9野からの情報が伝達されず、記憶の整理ができなくなって自分と他人の区別ができなくなり人格交替の現象がおこる。

 狐つきの女性は狐の霊がのりうつったらどうしようという不安があり、こっくりさんにのりうつった人の記憶であると判断してしまう。治療としては、こっくりさんの儀式を思いださないように休学させ、過去の記憶を思いだせたら1カ月後に正常となった。

 

      こっくりさんをやる時と催眠状態との類似性

 

             催眠

1。リラックス状態

 脳のシナプスからのノルアドレナリンの放出が減少する。脳のセロトニンの分泌が増加し、セロトニンからアセチルセロトニンへ、そしてメラトニンの合成が増加する。メラトニンは睡眠促進物質であり、刺激がない状態では睡眠に陥る。

2。一点に注意を集中する

 通常はメラトニンの分泌が高まると睡眠状態になるが、単調な刺激では睡眠直前の意識状態となる。覚醒と睡眠の中間の状態が催眠状態である。

3。暗示を与える

 大脳新皮質の前頭連合野の背外側部の46野はノルアドレナリン受容体が豊富にあり、脳の最高司令部であり、ワーキング・メモリーのセンターである。五感からの情報や記憶が一時的に蓄積される部位でもあり、46野が反応すると運動野に指令が行き、筋肉の収縮が見られる。

 恐怖などの強烈な情報はノルアドレナリンに最も反応し、逆に46野のオーバーヒートまたは麻痺をおこす。例えば、火事場の馬鹿力というのがあるが、通常では46野のリミッター機能により最大限出せる筋力の50%しか出せないようにコントロールされている。火事という命にかかわるような強いインパクトにより46野が麻痺してしまい、抑制がとれてしまって最大限の力が出る。狐に憑依されていると思っている女性が男性をもちあげることができるメカニズムも同じ機序が想定される。

 上記の催眠を行う方法は、こっくりさんの儀式を行うのと同じであり、この場合も催眠レベルの状態となり非常に暗示にかかりやすい状態なのだ。本や雑誌で見た内容の恐怖が記憶されていて、そのときの人物と交替しがちとなると解釈される。

 深い催眠にかかりやすい人は15~20%、催眠がかからない人は5~10%、中等度の催眠状態になる人は70~80%である。熱中しやすい人や10歳以下の子供が催眠状態になりやすい。また、疲労や睡眠不足でも46野の機能が低下する。

 通常は暗示の言葉に対して側頭葉の聴覚野から言語野へ行き、そしてそこから46野に行き、そこで判断をして運動野の運動の指示を出すが、46野の機能が低下すると、46野を介さずに直接、言語野から運動野へ情報が伝達され、判断することなく暗示にかかり、運動を始める。

 

          催眠の効果:催眠療法の有効性

 恐怖体験は生命の危機に対する反応でノルアドレナリンの分泌が増加し、通常よりも強い記憶の神経回路ができてしまう。短期記憶には最初の2週は海馬が関与しているが、長期の記憶には海馬以外の場所が使われるが、恐怖体験の記憶の神経回路が太くなっていて、すぐに思い出してしまう。

 肝だめしのような場面で恐怖体験を経験すると、そのとき大量のノルアドレナリンが分泌され、瞬時の大量の情報が46野に入るためオーバーヒートをおこし、46野の機能の麻痺がおこり、的確な判断ができなくなってしまう。

 

             催眠状態で暗示をかける

 パニック発作のメカニズムは多種の仮説があるが、ノルアドレナリン過剰説は有名だ。エレベーターの中に数時間閉じこめられたときの記憶が急によみがえってパニック症状がおこる。恐怖体験の記憶は消えないが、催眠状態で患者を安心させるような過去に経験した話を思いださせることにより、この記憶のネットワークを太くすることによってパニック発作は予防される。

 

参考文献:澤口俊之著:「私」は脳のどこにいるのか(筑摩書房)

 前頭連合野である46野は入力系(感覚系)でも出力系(運動系)でも最高レベルに位置しており、統合系の代表的な領野である。この領野はワーキング・メモリーという高度な認知機能に関係する。ワーキング・メモリーは、一般的には「行動や決断に必要な情報を一時的に保持し操作し、行動や決断を導く認知機能」といってよく、思考や言語などの精神活動のベースになっている。

 

 

 前頭連合野はさまざまな高次感覚領野群(側頭連合野や頭頂連合野)から入力を受けると同時に高次な運動性皮質である運動連合野や皮質下の運動性の構造(大脳基底核など)を制御する。前頭連合野の基本的な役割は、高次感覚領野からの入力、すなわち知覚や記憶にもとづいて行動の計画・プログラムを組立て、運動連合野や運動性の皮質下構造の活動を制御する。情動にかかわる部位(辺縁系など)にも前頭連合野は出力しており、これらの構造も制御できる。また、脳の覚醒系(青斑核のノルアドレナリン性ニューロン群から大脳へ広く投射しているノルアドレナリン系や、縫線核のセロトニン性ニューロン群からのセロトニン系など)にも出力を送っている。覚醒や注意あるいは集中のレベルを前頭連合野は制御できる。入力は前頭連合野が受けるのは高次感覚野からだけではない。体の内部状態や情動に関する入力を前頭連合野は受ける。

 前頭連合野がヒトの進化過程で最も豊かに発達してきた脳領域であり、チンパンジーとヒトの大脳皮質を比べると、第一次感覚野や運動野の広さはほとんど同じだが、前頭連合野は三倍もヒトの方が広く発達している。

http://www.ntv.co.jp/FERC/research/

http://sasapanda.net/ (Orbium-そらのたま-

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12月14日

イタリアの生理学者のギロチン直後の人体実験

    イタリアの生理学者のギロチン直後の人体実験

 

古川哲雄:断頭直後の人体実験、神経内科63:4942005

 イタリアの生理学者のGiovanni Aldiniの著書(1804)の中の銅版画に断頭直後の人体実験が描かれている。彼はその頭なしの人体を使って動物電気の実験を行った。古川先生の臨床メモには、その銅版画が載せられていた。気持ち悪いものだったが、断頭に興味があるので、インターネットで調べてみたら、なんとBrainという有名なイギリスの専門誌に、その銅版画が掲載されていることがわかった。

 断頭された脳は意識があるのだろうか?僕は数千匹のラットを実験用に断頭したことがあった。麻酔が不十分なこともあり、ラットの目を見ていると、数秒間はまばたきをして意識があるように思えた。 

 また、Giovanni Aldiniは、1801年に精神病患者に電気ショックを試みたことでも知られている。

 インターネットで調べると、下記のような記載が見られた。

 

http://www.bri.ucla.edu/nha/ishn/abs2004.htm9th Annual Meeting of the International Society for the History of the Neurosciences (ISHN)

 

Giovanni Aldini (1803) and the electrical cure for "melancholic madness"

Sherry Ann BEAUDREAU and Stanley FINGER

Department of Psychology, Washington University, St. Louis, Missouri, USA

 

Giovanni Aldini (1762-1834), nephew of Luigi Galvani, worked with his uncle and then on his own to extend some of his uncle’s findings on electrically-induced muscle contractions in frogs and other animals. In the 1790s he conducted electrical experiments on the bodies of recently executed humans. Often overlooked, however, is the fact that Aldini began to use electricity to help hospitalized mental patients in 1801.

His first patients were classified as "melancholics," although his writings suggest some might have had schizophrenia. Aldini described his initial findings, which included some successes and some failures, in a book published in 1803.

In this presentation, we shall examine what Aldini wrote about these early hospitalized cases and then ask where he came up the idea of using electroshock therapy to treat mental illness. Did it come from Benjamin Franklin and Jan Ingenhousz, who, on the basis of personal mishaps that resulted in a loss of consciousness, suggested giving strong shocks to the heads of melancholic patients in the 1780s? And was Aldini the first person to document the benefits of strong electrical shocks to the head in cases of mental illness?

Most histories of electroshock therapy begin with Ugo Cerletti, who worked in Italy approximately 130 years after Aldini published his initial findings on therapeutic shocks to the head. Cerletti seemed to have no knowledge of what Aldini had done, and he based his work on a mistaken assumption about epileptic convulsions and schizophrenia. By going back to Franklin, Ingenhousz, and Aldini, we hope to show that the concept and application of strong electrical shocks to the head as a method of treating mental illness was discussed and put into action at least two centuries ago.

 

下記のBrain reviewで、ギロチン直後の人体実験の銅版画が掲載されている。

http://brain.oxfordjournals.org/content/vol128/issue1/images/large/awh359f1.jpeg

http://brain.oxfordjournals.org/cgi/content/full/128/1/227/FIG1

http://brain.oxfordjournals.org/cgi/content/full/128/1/227

 

http://www.thebakken.org/research/bibliography-electricity.htm (電気)

http://butler.cc.tut.fi/~malmivuo/bem/bembook/01/01.htm (電気)

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11月15日

1リットルの涙、治療可能な脊髄小脳変性症は存在するのか?

1リットルの涙、治療可能な脊髄小脳変性症は存在するのか?

 

テレビドラマ「1リットルの涙」では、脊髄小脳変性症(SCD)の女子高校生が主役である。このドラマの元になった患者は僕が名大の大学院生だったころに名大病院に入院していたそうだ。教授回診の時か、外来でのベシュライバー(教授が神経学的所見を述べるのをカルテに記載する)のときに見たことがあるかもしれないが、記憶に残っていなかった。当時、名大神経内科で、遺伝性運動失調マウスであるrolling mouse Nagoyaに対するTRHの投与が神経症状を劇的に改善することが発見された。実際にSCD患者にTRHを注射して、その有効性を検討していたころだった。その当時、TRHがSCD患者の眼球運動障害に対する効果を研究していたのが、主治医の山本紘子先生であった。

 

 そのころ、1年先輩のK先生がSCDの臨床的研究をしていたが、神経内科という専門誌にその疾患の分類の総説を書くことなり、大変苦労していた。彼は非常に優秀で、フランスへの国費留学が決定していたが、突然、胃癌でこの世を去ってしまった。日本神経病理学会のときに同じ宿に泊まったが、風呂場で見た彼はひどくやせていたことに驚いてしまった。そのときに彼が発した言葉は、「わしはあかん、先が短い。太く短い人生だな。先生は長い人生を生きてがんばってくれ!」だった。その1ヶ月後に彼は亡くなってしまった。入院中は慰める言葉がなくて、一度も病室に見舞いにはいくことができなかった。

 

 現在のSCDの分類は当時と比べて、大きく様変わりした。遺伝性SCD(SCA)の遺伝子異常が次々と発見されたからである。ペンシルバニア大に留学していた時に、有名なRowland教授の講演を聞いたことがあった。彼は非常に教育的な講演をしたが、Machado-Joseph病(MJD)の紹介をした。ポルトガルに多い遺伝性SCDであったが、その病因として、アストロサイトが関係しているかもしれないと述べた。僕は小脳神経細胞が変性するので、おかしいと思ったが、質問はできなかった。3年間の留学後、日本に帰ったが、大府市の国立療養所中部病院に勤務していた時に、初めて、その患者を受け持った。彼はびっくりまなこを呈する典型的なMJD患者だった。当時、日本ではまれだと思われていたが、その後、遺伝子診断が可能となり、日本では遺伝性SCDの半数を占めることが判明した。常染色体優性遺伝の病気で、両親のどちらかが病気を持ち、子供の半数が病気を持つことになる。MJDは、CAGリピート病のひとつであるが、CAGがコードするアミノ酸であるグルタミンが異常伸長し、ポリグルタミン病とも呼ばれる。この物質が核の中に蓄積・凝集することにより、神経細胞が障害されると考えられている。まだ、MJDに対する根本的な治療法が開発されていない。

 

 ところで、ビタミンE欠乏性SCD(AVED:ataxia with isolated vitamin E deficiency)が1980年代に報告され、ビタミンEの大量投与が神経症状の進展を抑制し、現存する神経症状を軽度に改善することが報告された。この疾患は日本でも1990年代に報告があったが、非常に稀な常染色体劣性遺伝性疾患であり、運動失調、深部感覚障害を呈するFriedreich失調症様症状を呈する。このビタミンEが欠乏する理由はα-トコフェロール転移蛋白(TTP)の遺伝子異常であることが判明した。ビタミンEは脂質の抗酸化作用を持つラジカルスカベンジャーである。ビタミンEのうち、生理的活性を持つのはα-トコフェロールである。α-TTPは肝細胞に豊富に存在する。空腸で吸収されて、カイロミクロンに取り込まれたα-トコフェロールをα-TTPは肝臓で取り込み、肝臓で合成されたVLDL(超低比重リポ蛋白)に転送することによりリサイクルして血中濃度を維持する働きをすると考えられている。AVED患者では肝臓でのα-TTPの機能が低下しているため、血中のα-トコフェロールを保持することができず、その濃度が低下すると考えられている。α-TTPの遺伝子異常はフレームシフト変異、ナンセンス変異、ミスセンス変異が報告されている。α-TTP酵素活性が非常に低いと、ビタミンEの血中濃度は、1/L以下と極端に低く、神経症状の発症が小児期から始まる。それ以上の濃度である場合は、発症は思春期、場合により成人発症も報告されている。もし、1リットルの涙の主人公の病気がビタミンE欠乏によるものであったなら、ビタミンE大量投与療法が有効だったかもしれない。

 

 

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11月7日

医原病としての低燐血症―高カロリー輸液と制酸剤による

 

医原病としての低燐血症―高カロリー輸液と制酸剤による

 

 1970年後半、大学院生だったころ、燐酸塩を含まない高カロリー輸液(IVH)と制酸剤投与により誘発された燐欠乏症による多彩な神経症状を呈した1例を経験した.

患者は放射線治療後に発症した出血性びらん性胃炎に対し,絶食,通常輸液,制酸剤(maalox)投与が行われた.10日後から、高カロリー輸液を始めた。その2週後から、流動食が開始された。その4日後から、全身倦怠感,舌,口周囲の異常知覚が出現,数日の間に傾眠,四肢の異常感覚,脱力,対光反射消失,構音障害,深部反射消失,下肢の振動覚消失,排尿障害などの多彩な神経症状が出現した.患者が僕の親戚だったので、大学院生にもかかわらず、診察依頼が来た。

血清無機燐は0.4 mg/dl(正常値:2.5-4.5、神経症状の出る5日前)と低値を示し、髄液無機燐低下,髄液蛋白細胞解離,神経伝導速度の低下がみられた.当時は高カロリー輸液が商品化される前で、医師が高カロリー輸液の中身を調合していた。なんと、燐酸塩を輸液に入れていなかったことが判明した。燐酸塩の非経口的投与により神経症状は1カ月後にほぼ正常化した.

 

                       低燐血症の病態

IVHによる低燐血症が誘発される機序:

  燐の補給のない大量の glucose 負荷により細胞内へ燐が移動し消費される.

  本例では IVH と共に短期問ではあるが,制酸剤を使用していたことにより,その水酸化アルミニウムゲルが腸管内で燐と結合して,その吸収を阻害することの2つの要因が重なりあい,燐欠之をおこし低燐血症を招来したものと推定された.

 

                     低燐血症の神経症状発現機序

 Travisら,Lichtmanら:

 赤血球解糖系の抑制が低燐血症時にみられる。gIyceraldehyde-3 phosphate dehydrogenase stepでの障害の結果,2,3-diphospho-glyceric acid2,3-DPG)やATPの産生の低下がみられた.

   2,3-DPG の低下はヘモグロビンと酸素の親和性を増加させ,末梢組織での酸素の遊離が障害され, 燐を補給すると, この障害が改善される.

  低燐血症の中枢神経系,末梢神経系,筋肉の代謝障害は2,3-DPGの低下による hypoxia ないしATPの利用障害によると推定されている.

 

                     低燐血症の神経症状

1)意識:清明の場合もあるが,傾眠,昏睡。大発作のてんかんを示す症例もあり.

2)脳神経:外転神経麻痺,眼瞼下垂,瞳孔異常(左右不同,対光反射の消失,Argyll-Robertson pupil,口周囲の異常感覚、そしゃく困難、眼輪筋力の低下、鼻声、胸鎖乳突筋力の低下,構音障害など。(呼吸麻痺や呼吸異常)

3)運動系:高度の筋力低下が存在することが多い.四肢の twitchや筋痛がまれにあり.バリズム,アテトーゼ,上肢の振戦のなどの不随意運動、協同運動障害,失調症.

4)感覚系:三又神経領域とくに口周囲と手足の先端の異常感覚が多く,急速に全身に拡がっていく.深部覚も障害される.

5) 深部腱反射:ほぼ全例において低下, 消失.

6Lasegue徴候:1例にのみ陽性.

7)括約筋障害:排尿障害はまれ.

 

  低燐血症による神経症状は、知覚運動系障害,深部反射の消失、呼吸筋麻痺、髄液の蛋白細胞解離などが見られるため、Guillan-Barre syndromeGBS)との鑑別が必要となる.実際,数例において,その診断の下に副腎皮質ホルモンの投与や呼吸困難に対して気管切開が施行されていた.

 

GBSと低燐血症による神経症状との鑑別点

1)低燐血症の存在の有無,1mg/dl以下で神経症状を呈することが多い

2IVH の施行,制酸剤の投与の有無

3)低燐血症の神経症状の特徴として,感覚障害が口周囲,手足の先端の異常感覚から始まり,比較的急速に全身へ拡がっていくことや意識レベルの低下や球麻痺症状を示すことであり,しかも燐酸塩の補給により短期間に神経症状が急速に改善する。

4)本症例のように髄液の無機燐も血清と同様に測定しておく方が良い.

 

神経症状を呈した低燐血症の血清無機燐値:

  0.11.1mg/dl

髄液検査施行例:7例中4例に蛋白が6378mg/dl 軽度上昇、蛋白細胞解離.

 自験例:髄液蛋白 110mg/dlと中等度に上昇,蛋白細胞解離.

筋電図:4例中2例ではMCVの低下,治療後軽快.

脳波:Boelenesらの症例では high voltage rhythmic delta wave の出現.自験例では diffuse slow activity  が対称性にみられた.

治療: IVH を中止,IVH のカロリーを減少,制酸剤の中止,燐酸塩を補給.自験例では制酸剤と IVH は続行し,第二燐酸カリウムの補給が行なわれた.全般けいれんに対して、抗てんかん剤が無効のことがあるので注意が必要.呼吸異常に対して燐酸塩のすみやかな補給により肺活量が2倍になった症例も報告されている.

予後:低燐血症に起因すると推定されるけいれん,昏睡による死亡例が1例あるが,全般的には適切な治療により神経症状は完全ないしほぼ完全に治癒している.

 

結論: 高カロリー輸液,制酸剤による低燐血症は予防可能で、神経症状が発現後も適切な治療により回復可能であるので、この病気を見逃さないことが大切である.

(追記:この症例報告は日本神経学会の学会誌に投稿し、受理された。

高カロリー輸液,制酸剤投与中に発生した燐欠乏による神経障害の一例一燐欠乏症における神経障害の文献的考察一 臨床神経,20195-2001980

 

文献:

1)高木昭夫,高須俊明ら:高カロリー輸液に伴った急性知覚運動麻痺一低燐血症の症候群一,神経内科,52411976

2)飯田喜俊,白井大禄ら:低P血症の臨床一とくに制酸剤による低P血症の病態について一,日本臨床,3634871978

 

PS: 低燐血症による神経症状であるとすぐに診断できたのは、上記の文献をその患者を診察する数ヶ月前に読んでいたためであった。現在は、診断が困難な症例は、PubMedで文献検索をしている。最近、同様の症例が報告があり、驚いた。 

また、低燐血症は、過換気症候群(呼吸性アルカローシスを呈する)でも見られるが、過換気症候群の神経症状(口、手足のしびれ、脱力など)は低燐血症による神経症状とかなり類似している。

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10月30日

シャロン・ストーン、西条秀樹、脳卒中

シャロン・ストーン、西条秀樹、脳卒中

 

昨日、東京で”フリーラジカルと脳疾患”研究会があり、非常に有意義な講演がいくつもあった。

 

熊本市民病院の橋本洋一郎先生が講演の最後にビデオクリップを紹介した。見たような女優だと思ったら「氷の微笑」で主演した、シャロン・ストーンであった。本人が脳卒中となり、アメリカの脳卒中キャンペーンのテレビコマーシャルに出ていた。

 

講演終了後、広島大学の松本昌泰教授が、彼の開いたイベントで歌手の西条秀樹さんを呼んだが、1時間の講演料で150万円をかかったとのこと。シャロン・ストーンのCM出演はどうだったのかの質問であったが、ボランティアで参加したとのことであった。日本脳卒中協会では、t-PA(血栓溶解薬)が脳梗塞患者で保険適応になったので、公共広告機構を通じて、新聞に広告のスペースが空いた時に脳卒中のキャンペーンの広告を載せてもらえることになったそうだ。

 

芸能人などのタレントに講演してもらうのに1時間でいくらという相場が決まっているのであろう。かなり、以前に生命倫理に関する国際会議の事務を担当していた時に、立花隆先生を市民対象の講演を依頼したことがあった。講演料は1時間で100万円であったが、ある生命保険会社にスポンサーになってもらった。

 

http://www.e-eiko.jp/ (講演料の目安)

http://www.zakzak.co.jp/midnight/hollywood/backnumber/S/030417-S.html(シャロン・ストーン)

http://www.zakzak.co.jp/midnight/hollywood/backnumber/S/011002-S.html(シャロン・ストーン)

 

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10月24日

脳血管障害セミナー

先日、当地区での脳血管障害セミナーに岩手医科大学の寺山靖夫教授を招待した。彼の講演の中で、ポイントだけ書いてみた。

 

平成11年度

診療費 

 脳血管障害 35.8%

 高血圧   32.5%

寝たきりの原因

脳血管障害 37.9%

痴呆 10.1%

 

一次予防:危険因子の治療、除去 multiple risk factor症候群

     インスリン抵抗性 ――高インスリン血症

 降圧   42%減少

 スタチン  25%減少

 アスピリン 7%増加 (アスピリンは逆に悪化させる!)

ただし、二次予防では、アスピリンは28%減少

 

平成14年度の患者数

 高血圧 700万人

 脳血管障害 137万人

 

1.高血圧の降圧目標:140/90

2.高脂血症:スタチン系が酸化LDLを抑制

3.DM:ねたきりと死亡に関連する

4.AF/PAF:最大の予後不良因子

 

予防:

 シロスタゾール、スタチン、ARB

 

啓蒙が必要(t-PAが使えるようになる)

 Brain Attack is an emergency.

急性期治療:病態に基づく治療

 

二次予防:再発予防

 

修正可能な増悪因子に対する治療

 

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9月19日

愛知万博、認知症予防講座

愛知万博、認知症予防講座

 

 先日、夕方に愛知万博に初めて出かけた。長久手日本舘をインターネットで予約していた。行きにリニモに乗る方向に行かず、間違って、シャトルバスに乗ったら、乗客は僕一人だけであった。午後6時だったので、受付はすいすい通れた。日本舘では、宇宙船に乗ったようの錯覚を覚える立体感覚の映像の場面が一番よかったが、短時間であったので少し物足りなかった。

 

 今年の3月に、マリオットホテルでのある会合のあとにタクシーで帰った。愛知万博の話をしていたら、運転手が若手人気歌手を今、乗せてきたところだと言った。その歌手の名前がお互いにすぐには思い出せなかった。万博の応援ソングを歌っているとのことで、万博がうまくいくか心配していたそうだ。途中で氷川きよしの名前が浮かんだ。最近、人の名前がすぐに思い浮かばなくなった。生理的老化の範囲であると思っているが、髪も大分薄くなってきた。来月には、近くの公民館で認知症予防講座を190分の講義を2回行うことになった。

 

今回、2回にわたって、上記の講座を一般市民対象に開催します。以前は、認知症のことを、ぼけとか、痴呆などの言葉で呼んでいました。高齢者が増加するにつれ、認知症患者がますます増加してきています。高齢者になってもできるだけ健康な生活を送っていただくために、認知症予防講座を開くことにしました。第1回目は、認知症とはどういう状態を言うのか、診断はどうするのか、どのような病気があるのかを解説します。認知症をおこす2大疾患は、アルツハイマー病と脳血管障害ですので、それらについて詳しく紹介します。第2回目は認知症を予防するにはどうすればいいのかということを、最近の知見をもとに紹介します。食生活、生活習慣の改善、頭の使い方、運動療法などを説明します。

 

ところで、愛知万博の入場者は2000万人突破した。923日ユーミンのライブに僕は5枚の葉書を書いて応募したが、残念ながらはずれてしまった。3500人の定員になんと予約に応募した数が20万人だったそうだ。倍率は高いだろうと思っていたが、その数に驚いてしまった。  

 

参考文献:

宇野正威:「もの忘れ」の処方箋(生活人新書、NHK出版)

須貝祐一:ぼけの予防(岩波新書)

デヴィッド・スノウドン:100歳の美しい脳 アルツハイマー病解明に手をさしのべた修道女たち(DHC

http://www.oricon.co.jp/column/ID0002/index.htm (氷川きよし)

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9月7日

脳卒中診療のpitfall ―誤診症例から学ぶ―

脳卒中診療のpitfall ―誤診症例から学ぶ―

 

来月、名古屋市守山区医師会で、上記の演題で講演をすることになった。脳血管障害に関する講演を依頼されたが、一般的なことは有名教授の講演を何度も聞いていると思ったので、別の観点からの講演内容に決めた。誤診症例についての情報を医師間で共有する必要があると考えたからだ。迅速に正しく診断し、適切な治療を早く開始していたら、患者の予後が改善していたかもしれない場合もあったからだ。

 

生坂政臣先生(神経内科医、千葉大学医学部付属病院総合診療部教授)が書かれた“見逃し症例から学ぶ日常診療のピットフォール”(医学書院)は名著であり、プライマリー・ケアに関わる医師の必読書である。

 

10月の講演会で扱う病気は下記を予定している。ごらんのとおり、死亡症例が多いが、ありがたいことに、剖検を承諾していただいた症例が多かった。このうち、症例1、5、9については、論文で発表がなされている。症例7、8は学会発表がなされ、論文を投稿の準備をしている。

 

1.手指の単麻痺

2.椎骨動脈解離

3.くも膜下出血(微小出血)(死亡)

4.両側小脳梗塞(死亡)

5.中枢神経系肉芽腫性血管炎(死亡、剖検あり)

6.トルーソー症候群(胃癌)(死亡、剖検あり)

7.てんかん重積(結核性髄膜炎後遺症)(死亡、剖検あり)

8.クリプトコッカス髄膜炎(AIDS)(死亡、剖検あり)

. 上矢状洞血栓症(肥厚性硬膜炎)(死亡、剖検あり)

 

PS:“チャングムの誓い”について、この講演会でとりあげようと思っている。王様の病気についての誤診問題、ベーチェット病、慢性砒素中毒の問題など。おそらく講演後の質疑応答で話題になるかもしれない。日本ファン掲示板からの写真を拝借して使用させてもらおう。僕の書いた文章の内容でごく一部のファンから見当はずれの抗議があったが、僕を支持して反論の文章を書いていただいたファンに感謝したい。意見の多様性を認めないのは、民主主義の破壊につながる。

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8月16日

ボツリヌス中毒、患者が診断

ボツリヌス中毒、患者が診断

 

1984年から1年間週1回岡崎市民病院に神経内科の代務に行っていた。この病院は患者数が多く、朝9時から午後1時までに約100人の外来患者をこなしていた。血圧は看護師に前もって測定してもらい、再診で変わりのない患者の診察時間は、原則的に1~2分で終えた。そうしないと午後1時までに終わらないし、患者も短時間の診察に慣れていた。初診患者もすばやく診察する習慣ができて有意義な代務であった。午後からは1時間位、内科の先生から依頼された患者を診察していた。

 

 一番印象深かった患者はICUで人工呼吸器管下にあり、内科医の診断では重症筋無力症であった。重症筋無力症は、神経筋接合部の筋肉側運動終板膜に存在するアセチルコリン受容体を標的とする抗体の存在により、神経筋接合部の伝達が阻害される自己免疫疾患である。その神経症状は下記のごとくである。

 

1.随意筋の脱力と易疲労性を示す.脱力は休息で回復し、運動により増悪する.

2.眼瞼下垂と外眼筋麻痺による複視などで発症することが多い.

3.球麻痺症状(咀嚼,咽頭,舌などの筋力低下による嚥下障害、構音障害)

4.頸筋,顔面,四肢の近位筋などが障害されやすい.

 

四肢麻痺、眼球運動障害、球麻痺、呼吸筋麻痺が、診察前日より出現したとのことであったが、重症筋無力症にしては急速な経過だなと不思議に思って診察に出かけた。

 

ところが、驚いたことに、主治医が診断つきましたというではないか。なんとボツリヌス中毒だというのである。あやや! 教科書上の知識しかなくて不安であった。なんと患者がその日の新聞を見ていたらカラシレンコンによるボツリヌス中毒の記事を発見し、この新聞記事を指さしたのだった。珍しい食中毒ので、患者からの情報聴取が不十分だと、診断できない。患者自らが診断してくれたことで、合点がいった。

 

上記の症状以外に、この患者では瞳孔散大が見られたが、この症状が重症筋無力症とボツリヌス中毒の鑑別点なのである。この中毒はボツリヌス菌が作りだす外毒素により汚染された食品を経口摂取することにより発症する。我が国ではE型菌毒素によるもの が大部分を占める。この菌は嫌気性菌(破傷風菌と同じ)で缶詰、いずし、ソーセージ、真空パック食品などで起こる。この毒素が神経終末からのアセチルコリンの遊離を阻害することにより神経症状をおこす。摂食後12~36時間の潜伏期を経て、悪心、嘔吐、腹痛、下痢などの腹部症状が先行する。その後、神経症状が出現する。ボツリヌス中毒とよく似た症状は感冒、下痢症状が前駆してその後、運動神経や自律神経が障害される炎症性末梢神経障害でも見られる。

 

 

 ”君の瞳は1万ボルト、~地上におりた最後の天使~”という歌が以前にはやっていたが、瞳孔の大きさや対光反射の反応の観察は面白い。瞳孔の大きさを調節する神経は交感神経と副交感神経である。前者は瞳孔散大筋、後者は瞳孔括約筋を支配する。びっくりした時は交感神経が優位になるので瞳孔が散大するし、暗所でも散大する。明るいところでは逆に縮瞳する。かなり以前に、テレビ番組で医者が患者の死を宣告する時、ライトを瞳孔に当ててから、ご臨終ですといったが、なんと驚いたことに瞳孔反応(対光反射)が見られ縮瞳していたのだ。初歩的なミスなので、笑ってしまったが、講義での笑わせるネタに使っているので役立っている。

 

アセチルコリンは副交感神経の神経伝達物質であり、神経・筋接合部の伝達物質でもある。ボツリヌス中毒ではアセチルコリンの遊離が障害されるため、副交感神経の活動が抑制され交感神経が優位になるため、瞳孔は散大する。一方、例の地下鉄サリン事件のサリン中毒であるが、これは有機リン中毒の一種である。有機リン化合物であるサリンは、アセチルコリンを分解するコリンエステラーゼという酵素に結合してその作用を阻害するため、神経終末にアセチルコリンが増加しすぎて神経症状をおこす。副交感神経優位になるため瞳孔は収縮し、視野が狭くなる。治療はアセチルコリンの阻害剤である硫酸アトロピンと、キレート剤のPAMを用いる。

 

http://www.j-poison-ic.or.jp/homepage.nsf/0/ffb719cd55893f04492567e700306ee0?OpenDocument (ボツリヌス中毒)

http://mmh.banyu.co.jp/mmhe2j/sec06/ch095/ch095c.html (重症筋無力症、ボツリヌス中毒

http://www.medissue.co.jp/virus/microbiology/main_019.htm (グラム陽性菌)

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8月15日

幽霊の手はなぜ、下垂手なのか?鉛中毒説

         幽霊の手はなぜ、下垂手なのか?鉛中毒説

 

 お盆の季節である。日本の幽霊は、うらめしやといって、両手を垂らしている場合が多い。江戸時代から、戦前まで、おしろいの中に鉛が含まれていた。江戸時代の役者がおしろいを顔に塗りたくって、鉛中毒になって、両側の橈骨神経麻痺を起こし、下垂手になったのではないかと考えられている。

 

 また、橈骨神経麻痺をきたす病気には、Saturday Night Palsyがあり、土曜日の夜に深酒をして、頭が上腕を長時間圧迫してなる。別名、ハネムーン麻痺とも呼ばれ、腕枕をして、圧迫性の麻痺がおこる。インターネット上でも、その記載が散見される。

             

有機水銀中毒、ニュートン

 

 有機水銀中毒といえば、水俣病が有名である。次のような話があるのはご存じであろうか?かの天才中の天才科学者ニュートンが慢性水銀中毒だった。クローアンズ著の”ニュートンはなぜ人間嫌いになったのか”(白揚社)という書物に、その考察が書かれている。

 

ある時期にニュートンは精神変調をきたし、不眠、手のふるえ、食欲不振、被害妄想、人間関係に極端な感受性や、また記憶障害などを呈した。彼は錬金術にとりつかれた時期があった。彼はその実験の過程で大量の水銀の蒸気を吸入したのではないかと推定されている。上記の症状は慢性水銀中毒の症状であるので、最終診断として、ニュートンの残存している毛髪を調べた結果、大量の水銀の蓄積が証明された。

 

この本の著者は、ニュートンが中毒におかされていたにもかかわらず、その時代の最も偉大な知性でありつづける程の知的能力を維持したことに感動したと述べている。

 

http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/picture/f_030816.htm (丸山応挙)

http://www.theway.jp/zen/ (幽霊画コレクション)

http://blog.melma.com/00100064/20040603164429 (再発性単麻痺:hereditary neuropathy with liability to pressure palsies (HNPP)ではないのか?

http://www.ne.jp/asahi/ecodb/yasui/LeadTapWater.htm (鉛中毒)

http://yonokasa.oor.jp/sikan14-14-3namari.html (鉛中毒、鉛弾)

http://www.ncemi.org/cse/cse0919.htm (Saturday Night Palsy

http://www.joy.hi-ho.ne.jp/bukkon/mono12.html (下垂手)

http://mmh.banyu.co.jp/mmhe2j/sec06/ch095/ch095f.html (単神経障害)

http://akimichi.homeunix.net/~emile/aki/medical/public-health/node43.html

(重金属中毒)

http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD3618/ (Saturday Night Fever:映画)

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8月6日

しゃっくりの治療法:角氷、セックスが有効?

しゃっくりの治療法

 

吃逆(きつぎゃく)はしゃっくりのことであるが、横隔膜の不随意性・間代性痙攣が起こり,急激に吸気が声門を通るため,閉じられた声門が独特の音を発する。横隔膜ミオクローヌスに分類される。

 

多発性硬化症患者でしゃっくりが3日以上持続したことがあった。ウインタミンの筋注(50mg)やリボトリール(1.5mg/day)を試みたが、無効であった。患者はのどが渇いていたので、アイスキューブを口の中に入れたら、しゃっくりが見事にとまってしまった。最初この話を聞いたときには、まさかと思ったが、もしかしたら、新しい治療かもしれないと思って、Medlineを調べ、文献も取り寄せた。角砂糖や氷のことが書いてある文献を見つけた。

冷たくて、角がとがっている角氷が咽頭を刺激することにより、求心性(舌咽神経)の感覚情報が強力に発生することにより、しゃっくりをおこしている中枢に抑制的に作用するのかもしれない。

 

http://www.toiken.co.jp/dinews/syakuri.html (しゃっくりの治療)

http://www.bb.e-mansion.com/~mikamo/reffer/manoweb/toutu05c.html (しゃっくりの治療)

http://www.emedicine.com/emerg/topic252.htm (e-medicine

http://www.prodigy.nhs.uk/guidance.asp?gt=hiccups (prodigy guidance)

http://www.cfpc.ca/cfp/2000/VOL46-2000-PDFs/AUG00%20PDFs/vol46_AUG00_cme_2.pdf

(sexual intercourseが難治性しゃっくりに有効であった症例報告)

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