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8月24日

葛原茂樹先生からのメッセージ:教訓とモットー

葛原茂樹先生からのメッセージ:教訓とモットー

 

現在、葛原先生は日本神経学会理事長の要職につかれているが、非常に気さくな先生であり、学会などでときどきお話する機会がある。三重大学神経内科教授の退官最終講義で、彼の経験から得た教訓とモットーが述べられている。非常に含蓄のあることが述べられているので、引用する。

 

学生と若い医師・研究者諸君へ

 

信念を曲げない、権威に屈しない、長いものに巻かれない

頑張り過ぎない、欲張らない

先のことを考えない、今を一生懸命に生きる

若い時は楽をしない

武者修行をし、他人の釜の飯を食い、友人を増やす

 機会があれば未知の職場へ

 異質の人から学ぶ(まねぶ)=真似ぶ(まねぶ)

与えられた部署で誠実に役割を果たす

 年齢と経験、立場・職責に応じた働きをする

頼まれたことは断わらずに引き受ける 

 患者、同僚、上司から「頼まれる」=「頼りになる」と見込まれたことである

 

       医師としての生き方と目標

 

患者さんの訴えが一番大事=主訴は一番鋭敏なマーカー

診察を受けてよかったと思って帰っていただくことを心がける

五感を養い、自分の頭で考える

事実と目の前の現象に対して謙虚になる

権威者に盲従せず、他人の言を鵜呑みのにせず、常に自らの頭で判断する

典型事例に精通する→医学上の新発見は「違い」を感知することから生まれる

誤診例、重要例は必ず報告する→論文化は個人の経験を万人の知的財産に変える

臨床の場では常にsomething newに注意を払い、scientific clinicianを目指す

「長」がつく職になったら部下を鼓舞し育成することが大事な職務のひとつである

論文を書きなさい、その努力を怠る者は廃れて行くのみ(Publish or perish!

 

             最後に学生諸君と若人へ

 

君たちの可能性は無限大です!

奉仕の精神と高潔な志を持って高く大きく飛躍してください!

Bon Voyage!

 

「誤診例、重要例は必ず報告する→論文化は個人の経験を万人の知的財産に変える」

 

病気の鑑別がうまくいかない場合は、Pubmed を利用し、keywordをいくつか入れると、過去に発表された論文のタイトルが出てくる。非常に珍しい症例の場合、世界のだれかが論文にして報告していることが多い。世界第1例目の症例はめったにはない。本邦で2例、3例の症例は経験したことがある。そのような症例を学会発表しているが、症例報告として、論文に投稿するまでが長くかかってしまう。日常診療の多忙さ、また、つぎつぎと珍しい症例が出てくるため、英語の文献を読まないといけないとか、また、学会発表に要する時間の10倍ぐらいの労力が論文執筆に必要となるので、論文の執筆がかなり滞っている。

 

依頼原稿の場合は締め切りがあるため、締め切り2週間前になると、毎晩2時ぐらいまで原稿書きに集中する。最近書いた総説は、神経内科の「傍腫瘍性脳幹脳炎」である。引用文献が30件以内ということで、文献の取捨選択をしなければならなかった。また、最新の文献を引用したために、締め切り1週間後に原稿をメールで送付した。5月に日本神経学会があり、ペン大のDalmau教授の講演を聞いていたら、彼の最新の総説(paraneoplastic syndrome)がLancet Neurology4月号に掲載されていることが判明した。その総説では、傍腫瘍症候群の診断について、わかりやすく記載されていた。(1. Dalmau J, Rosenfeld MR. Paraneoplastic syndrome of the CNS. Lancet Neurol 2008; 7: 327. 2. Graus F, Delattre JY, Antoine JC, et al. Recommended diagnostic criteria for paraneoplastic neurological syndromes. J Neurol Neurosurg Psychiatry 2004; 75: 1135.)

 

また、American Academy of Neurology.の会員になっているので、毎週電子メールで最新論文のタイトルが送られてくる。その中に、TanらによるVGKC (voltage-gated potassium channel)自己免疫の臨床スペクトラムTan KW, Lennon VA, Klein, CJ, et al. Clinical spectrum of voltage-gated potassium channel autoimmunity. Neurology 2008; 70: 1883)の論文に気づいた。早速のこの論文の要約を総説に追加した。

 

「この抗体は最初、後天的neuromyotoniaで報告され、その後Morvan 症候群、てんかん、辺縁系脳炎、発汗過多や胃腸運動不全の自律神経不全を伴うことが記載された。Tan28) らは、72例を検討し、神経症状は急性~亜急性71%、多相性46%;71%認知障害、58%てんかん、33%自律神経不全、29%ミオクローヌス、26%睡眠異常、25%末梢神経障害、21%錐体外路障害、19%脳幹・脳神経障害であった。14%がCreutzfeldt-Jakob病と誤診された。新生物は33%で確認され、18例が癌(SCLC5例、前立腺癌4例、胸腺癌3例、扁平上皮癌3例(頭部、頸部、皮膚)、乳癌2例など)、3例が血液悪性腫瘍(B-cell lymphoma、慢性リンパ性白血病、mycosis fungoides)、5例が良性腺腫、1例が胸腺腫であった。89%で免疫療法は有効であり、50%では著効した。脳神経・脳幹障害として、複視または眼のかすみ(6例)、構音・嚥下障害(4例)、視力消失(3例)、半側顔面スパスム(1例)、顔面のしびれ(1例)、嗅覚消失(1例)が見られた。」

 

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